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BOB DYLAN and his band IN SHOW & CONCERT!@Zepp DiverCity

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ボブ・ディランのライヴに行ってきた。
前回の2010年はまさかのライヴハウスツアーだったが、その奇跡は再び起きた。
来日の時期もほとんど同じだったため、4年前の自分を思い出したりもした。

ボブ・ディランという人は、聴く人それぞれに特別な想いを抱かせる。
ライトなリスナーでも、熱心なファンにでも。
恐らくそれは彼の歌が、声が、心の濡れた部分に入ってくるからだろう。
村上春樹が、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で的確にその歌声を表現している。
“まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような”
初めて読んだ時に衝撃を受けたことを覚えている。この表現に共感する人、好きな人はとても多いはずだ。
2010年の来日ツアーには三度足を運んだが、そのうち一日は雨が降っていた。
その日ディランは「はげしい雨が降る」を歌ってくれた。
最終日に歌ってくれた「いつまでも若く」と共に、一生忘れない体験となった。
きっと今回も、そんな夜になるだろうと期待してライヴの日を迎えた。

ライヴでのボブは、オリジナルのアレンジから自由自在に変えてくる。
今回も初っ端からやられた。
定刻一分前に暗転するなり、アコギの音が聴こえてくる。
ギタリストのスチュ・キンボールが弾きながらステージを右往左往し、興奮を煽る。
小気味良い軽やかなリズム。何だこれ。聴いたことある気がする。というかよく聴いている曲だ。
“Things Have Changed”
以前はオリジナルに近いアレンジだった気がするが、今回はリズムを完全に変えてきていた。

ボブはステージ中央に設置されたマイクの前に立って歌う。
以前は殆どの曲をオルガンを弾きながら歌っていたが、今回はボブ用のオルガン自体が無い。
そして数少ない曲でプレイされていたエレキギターも無かった。
今回のボブは基本的にステージ中央に設置されたマイクの前で歌うことが多く、
ポーズを決めたりハンドアクションがあったりと新鮮だった。
また、予想外にハーモニカを多用しており、嬉しかった。
彼のハーモニカを聴けることは大きな喜びだ。
たぶん、ハーモニカで会話することもできるのだと僕は思っている。

時折ボブはオルガンの代わりに設置されたピアノを弾きながら歌う。
ステージの上に置かれたピアノはなかなか存在感があった。

今回のボブの声は驚くほど綺麗だった。
吠えるように、カエルのように歌う感じは少なくなって、
低音もファルセットに近いような伸びる高音も、本当に自然に響いていた。
あれだけ崩して歌っていても絶対に音程を外さないという話の通り、物凄く歌が上手い人だ。

今回のライヴは二部構成になっており、前半は“Tangled Up In Blue”から“Love Sick”
という最高の流れで終了した。
「ブルーにこんがらがって」を生で聴けた喜びのあとにくる魂の“Love Sick”。
照明が暗く殆ど闇の中で不気味に歌うボブ。しびれた。
非常にご機嫌なボブは“Thank you!! アリガトゥー!!”と日本語を発してステージを去っていった。
前回は最終日のみ“イーキマショウ!!”が飛び出したが、今回はツアーの早い段階から来た。
ボブはライヴでMCをしないため、ちょっと何か言うだけでも貴重だ。それも日本語なんて。

約20分後、チャイムのような合図と共に再びライヴが始まる。
ボブは帽子が脱いできた。期待を裏切らない、あの髪型だった。ふさふさだ。

第二部は2001年9月11日にリリースされたアルバム「Love & Theft」収録の
“High Water”から始まった。
近年のボブは90年代以降のアルバムからセットリストを組む傾向がある。
いずれも素晴らしい内容のアルバムだ。
常に現在を行き、過去を、未来を行く男。

シカゴブルース調の“Early Roman Kings”は
ジョージ・リセリのドラムとトニー・ガーニエの鉄壁のリズム隊に支えられ、
チャーリー・セクストンがギターを絶妙に入れていたのが印象的だった。
好きな曲である“Forgetful Heart”や“Spirit On The Water”も聴くことができた。

ライヴ終盤は2012年の最新アルバム「Tempest」から3曲続いた。
ルーツに根付いた多彩な曲調を備えた最新アルバムから、ボブはこの日6曲を披露した。
本編ラストの“Long And Wasted Years”が始まった瞬間に大歓声が上がる。
どんどん会場は熱を帯びていく。
ボブは歌いながら二ヤりとし、最後には拳を突き上げた。

アンコールは “All Along The Watchtower”から始まる。
以前はジミ・ヘンドリックスのバージョンを思わせるラウドなアレンジだったが、
今回はよりオリジナルに近いアコギのストロークから始まった。
音量も抑え気味で、終盤にボブがさらに音量を抑えてから唯我独尊にピアノを弾き始める。
収拾がつかなくなるように思えたが、リセリがドラムを激しく叩いて締め直し無事終了。
ライヴならではのバンドの集中力を味わった。

ラストは“Blowin' In The Wind”。風に吹かれて。
オリジナルからはかけ離れているものの、こちらはある程度アレンジは固まっているようだった。
最後にハーモニカを吹いてくれた時は本当に感動した。

ライヴ終了。整列。お辞儀なし。ドヤ顔。
一連の流れのはずが、大歓声に応えようとちょこっと前進するボブ。まさか。
急にかがんで、最前列のオーディエンスと握手をしているように見えた。
実際はプレゼントを受け取ったり、サインを書いたりしていたらしい。
それもかなり時間をかけて。ありえないことが起きたのだ。
素晴らしい瞬間に立ち会った。

本当に最高のライヴだった。
前回は60年代の曲も多くそれはそれで良かったが、ライヴ自体は今回の方が
遥かに充実していたように思う。
全体的により温かみのある音作りで、しっとり落ち着いていた印象だった。

72歳のボブは百戦連磨のバンドメンバーと共に、4年の間に全く別のライヴを作り上げてきた。
ネバー・エンディング・ツアーを敢行し、へたをすれば週5日以上でライヴをし続けている。
それに比べて僕はこの4年の間に何をし、何が変わっただろう。
始まる前からこのことを思っていたが、あんな素晴らしいものを見せつけられた後には
なおさら思ってしまった。

充実感に溢れて会場を出る途中、階段で隣を歩く志磨遼平さんに気付いた。
何という偶然。思わず声を掛けてしまった。凄く優しい笑顔だった。
憧れの人と、ボブ・ディランのライヴの感想を共有することができた。
開演前に二階席の最前に座るLOVE PSYCHEDELICOの二人や菅野ヘッケルさんの姿を
見つけて嬉しくなっていたが、もはや天にも昇る気持ちになった。
やはりボブ・ディランは神様なのかもしれない。

01. Things Have Changed
02. She Belongs To Me
03. Beyond Here Lies Nothin'
04. What Good Am I?
05. Waiting For You
06. Duquesne Whistle
07. Pay In Blood
08. Tangled Up In Blue
09. Love Sick
- Intermission -
10. High Water (For Charley Patton)
11. Simple Twist Of Fate
12. Early Roman Kings
13. Forgetful Heart
14. Spirit On The Water
15. Scarlet Town
16. Soon After Midnight
17. Long And Wasted Years
- encore -
18. All Along The Watchtower
19. Blowin' In The Wind
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by modsmiley | 2014-04-12 03:03 | 音楽