ローリング・ストーンズの来日公演に行ってきた。
前回の来日は8年前、2006年。僕は19歳だった。
当時は40周年のベスト盤「Forty Licks」とオリジナルアルバム数枚を聴いた程度ではあったが、
とにかく行かなくてはという思いで一般発売のチケットをぴあで並んで買った。
それでも希望していた初日は取れず、二日目の、しかもB席を取るのがやっとだった。
東京ドームの二階席から見るストーンズは豆粒だったが、
生でストーンズのライヴを体験したという事実は相当に大きいものだった。
それから全アルバムを聴き、有名な公演が収録されたブートレグを聴き、
ギターも憧れのキース・リチャーズが使っているものと同じものを使い始めた。
ストーンズの映像を見るのが好きで、次にライヴを見ることを様々妄想し心待ちにしていた。
そしてついに来日公演決定。東京ドーム三日間。
当然のように三日分のチケットを押さえた。次に来たら全ての公演に行きたいと思っていたので、
今回の来日公演が東京ドームのみだったのは幸か不幸か。(僕にとっては、間違いなく幸だ)
残念ながら夢のGC席は取ることができなかったが、席は8年前を思えばずっと良い。
初日、いや全ての日程でそうだったが、東京ドームへ向かう僕の心境は8年前と全く変わらないものだった。
はやる気持ちを抑えられず、「これからストーンズを見るんだ」という思いが満ち満ちていた。
来日公演のスタートは“Get Off Of My Cloud”。キースのギター一発で始まる妄想は崩れ去った。
しかしチャーリーのドラムから始まるのも新鮮だった。
2012年の50周年記念ライヴもこの曲で始まることが多かったため、それを追体験できる形となった。
初日は、キースの元気が無かった。いつものように動き回るわけではなく、
下を向いて弾いていることが多かった。
“It’s Only Rock ’N’ Roll”、“Gimme Shelter”“Jumpin’ Jack Flash”は
イントロが決まらずやり直していた。
しかしギターの音は爆音だった。
こんなにも大きな音でキースのギターが聴けるなんて思わなかったから、感動した。
序盤から大好きな曲「ダイスをころがせ」“Tumbling Dice”をやってくれた。
You got to roll me!!
手拍子と共にリフレインが鳴り続けるところが大好きだ。
まさかの“Wild Horses”と“Emotional Rescue”が初日から登場した。
特に後者は2013年のハイドパークの音源がとても良かっただけに、
イントロが鳴った瞬間歓声を上げてしまった。
最新ベストアルバム「GRRR!」に収録された“Doom And Gloom”は聴くのを楽しみにしていたが、
ミックのギターと歌が噛み合ってない感じがした。
しびれを切らしたチャーリーが無理矢理終わらせたようなエンディングだった。
50年もギターを弾いている二人がいるのだから、わざわざミックは弾かなくても良いのに、と思った。
70年代の黄金期を流麗なスライドで支えたミック・テイラーも今回のツアーには付いてきてくれた。
正直絶対に見ることができないと思っていただけに、これは本当に奇跡だ。
その登場はキースの歌う“Slipping Away”からだった。
当時からは考えられないほど太ってしまったが、やはり変わらずレスポールを弾いていた。
ミック・テイラーはその後“Midnight Rambler”で再び登場し、
ミック・ジャガーの吹くブルースハープとの掛け合いを見せてくれた。
テイラー、ロニー、キースの三人が横並びで揃ってレスポールを弾く光景が壮観だった。
キースは“Miss You”で花道に来たと思ったら、ギターを弾くことなく掲げたままで戻っていった。
この日、一番盛り上がったのは何故かリサ・フィッシャーが“Gimme Shelter”で絶唱した時だった。
そんな感じで、初日は突っ込みどころ満載。
しかしながら本当に愛おしいバンドだと感じた。
それでも最高なのがストーンズのライヴだ。
二日目は復活のキースによる“Start Me Up”から始まった。
ロニーが元気よく飛び跳ねながらギターソロを撃つ。
この日はアリーナで見ることができた。とても遠かったが真正面で
キースとチャーリーを終始肉眼で見ていることができる席だった。
ミックが花道に来ると顔がはっきりと見えた。本物だった。ずっと若くてかっこ良かった。
風貌や動き、全身から発せられるオーラが70年代の感じそのままだった。
キースは初日とはまるで別人。これだ!と思った。
彼のリズムギターが冴えるだけで圧倒的にグルーヴが違う。
この日のまさかは“Angie”だった。
人気曲ながら、最近のツアーではあまり演奏している印象は無かったのでびっくり。
キースの弾くアコギはハミングバードではなかったが、とても感動的だった。
連日、ファンの投票によるリクエスト曲が一曲演奏されており、
この日は“Silver Train”だった。テイラーとライヴで演奏するのは本当に数えるほどしか記録が無いそうで、
とても貴重な瞬間に立ち会うことができた。
珍しくストラトを使ってのスライドプレイだった。
“Honky Tonk Women”はカウベルではなく、キースの開放弦から始まった。
おかげでちょっぴりイントロが引っ張られて嬉しかった。あれ、テンション上がるんだよなぁ。
チャック・リーヴェルのホンキー・トンク・ピアノ・ソロもにこやかに。
キースヴォーカルの曲は、この日のみ“Happy”が演奏された。
バタースコッチの5弦テレキャス“ミカウバー”に4カポが付けられたのを見た瞬間にそれとわかり、
幸せな気分になった。
ロニーのペダルスティールも冴えわたっていた。尺がとても長く感じた。
二日目はとにかくキースの復活、キースの笑顔が嬉しく、
肉眼でストーンズの姿を見ることができたのが良かった。
そして最終日。
夢にまで見た“Jumpin’ Jack Flash”のスタートだった。
8年前は絶対この曲で始まると思っていたら違い、今回もそれが叶わずにいたが、最終日にしてついに。
この日は演奏が始まる前からミックもステージに登場し、キースと共にステージ前方に出てきて
始まるという珍しい展開だった。
“It’s Only Rock ’N’ Roll”では、キースはいつもの黒いES-355ではなく白いES-345を使っていた。
「SHINE A LIGHT」で見て物凄くかっこいいと思っていたギターなので嬉しかった。
そして何より“Ruby Tuesday”。
二日目の“Angie”と同じく、演奏が始まった瞬間に東京ドームの空気が変わるのを感じた。
初来日の演奏がライヴ盤「Flashpoint」に収録されていて有名なだけに、
今回も必ずやってくれると思っていた。
キースはアコギを弾きながら自分のマイクが用意されていないことに気付き、
舞台袖に訴えあわててスタッフがマイクを用意するというハプニングもあった。
一番はほぼ間に合っていなかったが、曲の途中からはしっかりキースのハモりを堪能できた。
“Doom And Groom”は日に日に良くなっていて、最終日はきっちり決まっていたように思う。
でもミックはやっぱり弾かない方が良いと思った。
リクエスト曲は、“Respectable”。
正直この曲が選ばれたことに対しては何故?と思ったが、
ここでアナウンスされていた「スペシャルゲスト」の登場。
HOTEIさんだった。HOTEIさんはテレキャスを弾きまくり、ミックと一本のマイクを分けてコーラスもしていた。
ストーンズも彼の勢いに乗せられて気合いの入ったパフォーマンスを見せてくれた。
凄い。日本人が、ローリング・ストーンズの中に混じって演奏するなんて。
キースとロニーと一緒にギターを弾いて、後ろにはチャーリーがいるんだ。
毎晩ミック・テイラーと共に演奏される“Midnight Rambler”。
リズムに徹したキースがグイグイ引っ張り、テイラーがレスポールを弾きまくる。
照明の感じや、ミックの煽りを見ていたら72年の映像と重なった。
今、俺は「レディジェン」と同じものを見ているんだ。
黒く塗れ!“Paint It,Black”。
“Ruby Tuesday”と同じ日に演奏されると、とたんに清志郎さんを思い出す。
ミックはスタンドマイクを持ち上げて歌っていた。60年代と同じ!
悪魔を憐れむ歌、“Sympathy For The Devil”はステージが燃えているような演出で始まる。
アリーナで見た夜は実際に焦げた匂いを感じた。
あのファルセットのコーラスを観客が始め、ルシファーと化したミックが
羽のついたマントをなびかせながら歌い出す。
しかしここでの主役もやはりキースだ。P-90を搭載したレスポールTVモデルで突き刺さるような音色を出す。
ギターソロは言うなれば休符だらけ。期待する分だけスカされ、完全に彼のペースである。
…ほとんど弾かないギターソロなんてあるのか!
ミックの掛け声と共に“Brown Sugar”が始まるといよいよライヴも終盤だとわかる。
これまで書かなかったが、やはりミックのパフォーマンスは超人的だった。
ミック・ジャガーだから当たり前だと思って見ているが、冷静に考えれば70歳の人である。
毎晩欠かさないステージの端から端までダッシュ。衰えないダンスのキレ、歌唱。
東京ドームに集まる5万3000人はもちろん、世界のどこへ行っても彼の前で集まる人は一つになるのだ。
YEAH,YEAH,YEAH,HOOO!!!
キースがリズムを引っ張り、演奏がなかなか終わらない。ロニーに目配せして、もっとソロを弾けと煽る。
それに笑いながら応えるロニー。
最高のバンドだ。
アンコールは無情の世界、“You Can’t Always Get What You Want”から始まる。
50周年ツアーからはご当地の合唱団を招いているが、この日本公演では
洗足学園音楽大学の「洗足フレッシュマン・シンガーズ」が参加した。
オリジナル音源を再現した美しく感動的なコーラスが終わると、
ハンティング帽を被ったミックがハミングバードを弾きながら歌い始める。
途中で「イッショニウタッテ!」と促される。来日の度に使う日本語はだいたい一緒のようだが、
ミックの日本語は上手い。定番の「カワイイネ、アトデデンワスル」は毎回笑ってしまう。
観客を巻き込んでの大コーラスはテンポを上げていく。
これ、本当にテンションが上がって楽しい。祝祭感。まさにお祭り。
最終日のみ、演奏が一度終わってからチャーリーがリズムを刻み続けてまた始まった。
時折見せる、ジャムバンド感がたまらない。
ラストは“(I Can’t Get No) Satisfaction”。
「無情の世界」から繋がるラスト二曲の流れは、こちらの足りない気持ちをまさに代弁しているかのよう。
まだまだ聴きたい曲はたくさんある。
キースはリフを弾いてソロを弾いて、ミックは最大限に煽りまくる。
いつまでも続いてほしいと願ったが、いつのまにか来日公演は終わっていた。
最終日は座席の位置としても音響が良く、ロニーの音もよく聴こえた。
キースとチャーリーの呼吸を感じることができたのは一生の宝物だろう。
前回の来日よりサポートメンバーを減らしただけあって、バンドの演奏がよりダイレクトに伝わってきた。
JJFから始まるセットリストといい、ずっとイメージしていたストーンズをそのまま感じることができた。
本当に最高だった。
ふと気付けばキースのことばかり書いていた。
自伝を読んだせいもあって、前よりもさらに好きになってしまったらしい。
あの人、HOTEIさんが演奏し終わったあとに笑顔で自ら会釈して握手していた。
掃ける時も、ドラム台から降りるチャーリーに手を貸してあげていた。
なんて最高な奴なんだ、キース。
夢のような三日間だった。
ありがとう、これからも付き合うぜ。
世界最高のロックンロールバンド、ザ・ローリング・ストーンズ。
First Night
01.Get Off Of My Cloud
02.It's Only Rock 'N' Roll
03.Tumbling Dice
04.Wild Horses
05.Emotional Rescue
06.Doom And Gloom
07.Bitch (Fan Vote)
08.Honky Tonk Women
09.Slipping Away (with Mick Taylor)
10.Before They Make Me Run
11.Midnight Rambler (with Mick Taylor)
12.Miss You
13.Paint It, Black
14.Gimme Shelter
15.Start Me Up
16.Brown Sugar
17.Jumpin' Jack Flash
18.Sympathy For The Devil
- encore -
19.You Can't Always Get What You Want (with the Senzoku Freshman Singers)
20.(I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)
Second Night
01.Start Me Up
02.You Got Me Rocking
03.It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)
04.Tumbling Dice
05.Angie
06.Doom And Gloom
07.Silver Train (Fan Vote - with Mick Taylor)
08.Honky Tonk Women
09.Slipping Away (with Mick Taylor)
10.Happy
11.Midnight Rambler (with Mick Taylor)
12.Miss You
13.Paint It, Black
14.Gimme Shelter
15.Jumpin’ Jack Flash
16.Sympathy For The Devil
17.Brown Sugar
- encore -
18.You Can’t Always Get What You Want (with the Senzoku Freshman Singers)
19.(I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)
Last Night
01.Jumpin’ Jack Flash
02.You Got Me Rocking
03.It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)
04.Tumbling Dice
05.Ruby Tuesday
06.Doom And Gloom
07.Respectable (Fan Vote, with special guest HOTEI)
08.Honky Tonk Women
09.Slipping Away (with Mick Taylor)
10.Before They Make Run
11.Midnight Rambler (with Mick Taylor)
12.Miss You
13.Paint It, Black
14.Gimme Shelter
15.Start Me Up
16.Sympathy For The Devil
17.Brown Sugar
- encore -
18.You Can’t Always Get What You Want (with the Senzoku Freshman Singers)
19.(I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)